心身ともに快適でエコでもある健康住宅の家づくりとは
近年ヒートショックによる死者の増加が問題になっています。原因は主に住居内の気温差。
それを受け国は、2020年以降の新築住宅に、ヒートショック対策に関する新基準を適用することを決定しました。
ここではヒートショックについて、新築住宅に求められる具体的な対策とは何かを解説します。
ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が急激に上下し、脈拍が変動することを指します。さらに、入浴中であれば、血管が広がって急に血圧が下がりますし、もし、例えば42度くらいの熱めのお湯に浸かったとすれば、さらに血圧が上下します。
これによって、もともと血管が部分的に狭くなっていた人の場合、血管が詰まってしまうことがあるのです。そうなると、心筋梗塞で瞬時に苦しくなったり、脳梗塞で動けなくなったりするため、そのまま浴槽でおぼれて亡くなってしまうのです。
これは高齢者に多いですが、生活習慣病、いわゆる脂質異常症や糖尿病、高血圧の症状がある場合も血管が詰まる可能性があるため、要注意です。
2011年に地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センターが、全国47都道府県635におよぶ消防本部のデータを基に、入浴中の心肺機能停止者数を発表。
報告では、1月が最多の1759人、最少は8月の165人となっており、冬場にヒートショックが起こりやすいことがわかります。ですが、寒い地域=ヒートショックが起こりやすいというわけではありません。
東京都健康長寿医療センターは都道府県別にみた、高齢者1万人あたりの入浴時の心肺停止者の数も発表。結果、香川県が最多の7.16人でした。そして、寒い地域を代表する北海道は、なんと47都道府県中46位という結果になりました。
この理由は北海道の寒さ対策です。現地では、窓などのサッシを2重にするなど、すでに冷気を入れないような対策が取られています。
つまり、新築で家を建てる場合、設計段階からヒートショック対策を考慮してできるだけ住居内の気温差ができない設計にすればよいということです。
新築住宅でヒートショック対策を行うには、住居の気密性と断熱性能が肝心です。
家の隙間がどれくらい小さいかを示す性能のことです。気密性が高まれば、家の中の温度が、外気温に影響されづらくなり、安定した室温を保てます。
冬は熱を逃がさず、夏は太陽からの熱を部屋に伝わらないようにする部材を使うなどして断熱性能を高める必要があります。そうすれば、室内の温度差が減少していきます。
気密性が高まることで、室内にホコリやダニが溜まる可能性があります。そのため、気密性の高い新築住宅には24時間計画換気が取り入れられています。
これは、すでにどの新築住宅でも義務付けられているもので、住居内の空気を2時間で全部入れ替えられるように設計されています。
国も住居のエネルギーをスリム化させることに、本格的に取り組んでいます。
その証拠として、2020年以降は断熱性能が高いなど省エネ性能を備えた新規格の家でないと建てられなくなることが、決まっています。つまり、今後の新築住宅には気密性能と断熱性能が備わっていることが当たり前になるということです。
しかし、2020年までに家を建てる場合は新規格に適合させなくてもよいため、何も知らなければ、新規格よりやや劣る家を建ててしまう可能性もあります。現時点で新築を建てる場合、今後当たり前になる基準をすでに満たした家にするかどうかを考えることは非常に大切だといえるでしょう。