心身ともに快適でエコでもある健康住宅の家づくりとは
このページでは、機能性や条件、さらに一般住宅との違いなど、健康住宅とはどんな家なのかを紹介します。
健康住宅とは何かを理解するうえで、最初に知っておきたいのが住むヒトの健康と住環境との関係です。一般社団法人である健康・省エネ住宅を推進する国民会議によると、健康に対して害やリスクとなる要因には以下のようなものが挙げられています。
このように、アレルギー要因や大きな温度差などは身体によくないことが知られていますが、精神的なストレスを受けるような家も健康住宅とは呼べないということがわかります。これらのネガティブ要素がない住宅を実現するために必要となる機能が以下になります。
次に素材や設備という観点から、健康住宅とそうでない住宅との違いを具体例としてご紹介します。
項目 | 健康住宅 | 非健康住宅 |
---|---|---|
構造材 | すべて国産無垢材 | 外国産木材や集成材 |
フローリング | 国産無垢材 | 合板 |
下地 | 揮発性のない安全な素材 | 合板下地 |
接着剤 | デンプン剤 | 酢酸ビニル系接着剤 |
給水管 | ステンレスやポリプロピレン製 | 塩化ビニール |
断熱材 | ウールブレス(羊毛の断熱材) | グラスウール |
内装 | 和紙や布 | ビニールクロス |
シロアリ対策 | ホウ酸やヒバオイル | 駆除剤 |
畳 | 減農薬畳 | スタイロ畳 |
コンロ | ガスコンロ | IHクッキングヒーター |
■構造材
国産の無垢材は、健康被害の原因となるホルムアルデヒドが含まれていません。また木の精油にはダニやカビなどの増殖を抑える効果もあるため、シックハウス症候群のリスクが少ない安全な構造材なのです。
安さで人気の外国産建材や集成材には、有害物質を含む防腐剤や接着剤が使用されています。国産無垢材と比較すると、シックハウス症候群を引き起こす可能性の高い構造材です。
■フローリング
人間が吸い込む空気の大半は、床から登ってくる空気。フローリングに有害物質を含まない国産無垢材であれば、足元から登ってくる空気も安全です。
フローリングに使用されることの多い合板は、薄い板を接着剤で張り合わせたもの。接着剤にはホルムアルデヒドが含まれています。とくに、地面と顔が近い位置にあるお子さんへの健康に影響を及ぼす可能性が高い建材です。
■下地
下地に揮発性のない安全な素材を使用している場合は、有害な物質が少ないため安全です。しかし一般的に使用されている合成下地は、ホルムアルデヒドを含む接着剤で板同士を張り合わせています。
燃えないよう表面を有機リン系やハロゲン系の科学物質でコーティングしているため、人体に悪影響を及ぼす可能性もある建材です。
■接着剤
デンプン剤に使用されるでんぷんは、食べても問題のないもの。化学物質が含まれておらず、接着剤特有の鼻を突くような匂いがありません。
一方酢酸ビニルは、厚生労働省が行った発がん性試験で発がん性が認められています。現在は「適切な運用」を求められている物質ですが、建材の接着剤としては最もスタンダードなもの。危険性を帯びた物質ながら、多くの建築物で使われています。
■給水管
ステンレス管は施工の際に接着剤を必要としません。またポリエステルは燃やした時に水と酸素になるだけで、人体への影響がない安全な素材。耐久性で選ぶならステンレス・手頃さで選ぶならポリエステルなど、健康面以外に重視するポイントから給水管を選ぶのもおすすめです。
塩化ビニルの給水管には、加工しやすくするために使用される可塑剤が使われています。内分泌かく乱物質を含まれている場合があり、給水管を通った水を経由して体に影響を及ぼす物質を取り込んでしまう危険性も否定できません。
■断熱材
人体への影響がないウールやポリエステル、ホウ酸で作られているウールプレス。安全なだけでなく断熱性や季節に適した温度に調整してくれる調湿性能、長持ちするという特徴から、住宅の断熱材に適しています。
ガラスを繊維状にしたグラスウールは、断熱性の高さやシロアリを寄せ付けない機能性、安さといった多くの長所を持つ断熱材。しかし、世界保健機構からは「ヒトへの発がん性の可能性がある」との評価を受けています。
■内装
自然の素材から作る和紙や布クロスには、有害物質が含まれていません。安全性が高いだけでなく、和紙の持つ柔らかな風合いが温かみを演出してくれますよ。
内装に多く用いられるビニルクロスには、塩化ビニルモノマーという発がん性が疑われる分子が含まれています。健康被害が心配されるだけでなく、カビやすいという難点も。
防カビ剤や施工の際に使用する接着剤にも有害物質が含まれているため、ビニルクロスを使うことによって負のスパイラルを引き起こす可能性があるのです。
■シロアリ対策
匂いが強く虫を忌避する効果があるヒバオイルや、肝臓を持たない虫や動物にとって害のあるホウ酸などを使用してシロアリ対策を行うのが安全です。人間の肝臓で分解できる成分なので、食べても無害だと言われています。
駆除剤の場合は、シックハウスを引き起こすリン系殺虫剤や発がん性のあるピレスロイド系殺虫剤が使用されるため、健康被害を受ける可能性が高いのです。
■畳
低農薬栽培のワラを使用した減農薬畳を使用することで、防虫紙や薬剤による健康被害を防ぐことが可能です。
近年多く使用されているスタイロ畳にはカビが生えない発泡スチロールが使用されていますが、この素材や着色料には発がん性が示唆されていたり虫がつかないように高濃度の農薬が使用されていたりと、人体への影響が問題視されています。
■コンロ
IHクッキングヒーターからは人体に有害な電磁波が発生しますが、ガスコンロからは発生しません。よく「火を使用するためCO2が排出される」と言われますが、IHクッキングヒーターで使用される電気を発電する際も同じくCO2が排出されているので、電気=エコだとは言えません。
IHクッキングヒーターが発生される電磁波について、WHOは2007年に「電磁波によって小児白血病にかかる確率が高まる可能性がある」と発表。ヨーロッパではこのような健康被害からIHクッキングヒーターによる使用する人は少ないとされています。
つらいアトピーやアレルギーの原因はさまざまですが、中には住宅環境が引き金となり発症することもあります。
主な原因は、住宅に使われている化学物質・ホルムアルデヒド。体内へ吸い込んでしまった後、体内でアレルギー反応を引き起こし、かゆみや湿疹といったアレルギー症状が出る場合があります。
アトピーやアレルギーを持つ人が家で落ち着いた生活を送るためには、科学物質を含まない自然の建材を利用するのが効果的。家を建てる前であれば、使用する建材のサンプルの匂いをかいでみて体に不調が起こらないか確認するのがおすすめです。
また、ハウスダストやダニ、カビが溜まらないように換気を行う必要があります。窓を開けて換気することも大切ですが、24時間換気できるようなシステムをつけておくことも大切です。
マメに清掃してハウスダストを減らす努力も忘れてはいけません。ホコリや小さなごみは角や隙間に溜まりやすいもの。掃除の回数や頻度を意識するだけでなく、部屋の間取りや収納スペースの配置を工夫してササッと掃除できるように日ごろから整えておくことも大切です。しかし、過ごしやすく体に優しい住環境になるよう毎日努力していても、建材から化学物質が絶えず発生していたら効果は半減。家を新しくする際には、構造材や下地、接着剤などの1つひとつに有害な物質を含む建材を使用しない業者を選びましょう。
2003年7月1日の建築基準法改正により義務付けられたシックハウス対策。家を新築・リフォームしたこときっかけに体調を崩すシックハウス症候群を防ぐため、有害な化学物質の使用を制限あるいは禁止しています。
規制されている化学物質は、シックハウス症候群の主な原因となるホルムアルデヒドとクロルピリホスの2種類。とくに害虫駆除で使用されるクロルピリホスの規制は厳しく、添加されている建材を建築物に使用することは禁止されています。よく耳にする「ホルムアルデヒド」はあくまで規制対象になっているだけで、今でも合板やパーティクルボードなどの接着剤として使われています。
法律で制限されている2つの科学物質以外にも、トルエンやキシレンなど人体に影響を及ぼす化学物質はさまざま。しかし法律で厳しく制限されているわけではなく、使用を制限するかどうかは業者の判断にゆだねられています。
気密性の高い家が主流になったうえに化学物質を含んだ生活用品が増えた現代では、ハウスダストや有害物質が家の中に溜まりやすいのが現状です。換気やこまめな掃除など、日々の努力でシックハウス症候群のリスクを回避する方法もありますが、化学物質を含んだ建材や内装が発生源になっている場合、個人の努力で解決することは難しいもの。健康のことを考えて家を建てるなら、建材1つひとつにこだわって科学物質を可能な限り抑えるのがおすすめです。
もちろん、これらはあくまで一例ではありますが、健康住宅に住みたいと思うなら、細部までこだわった家づくりが不可欠というわけです。